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Ⅵ-3.小児「鼻づまり」の治療指針

最後に、小児の「鼻づまり」に対する治療指針を要約します。

まず日中の「鼻づまり」だけでなく、睡眠中のいびきや口呼吸がみられる場合には、慢性鼻炎によるものか、アデノイド肥大によるものか、また副鼻腔炎が合併しているかどうかなどについて、正確な診断を得ることが必要です。前述したように、慢性鼻炎の軽度な例は、日中には症状がみられない「隠れ鼻づまり」となっていることが多く、日中の所見で診断を下すことは専門医にとっても容易ではないことを銘記しておく必要があります

「鼻づまり」の原因が慢性鼻炎(アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎)によることが明らかになった場合は、まず保存的な治療を選択します。最初に薦められる治療は、ステロイドの点鼻薬を―できれば鼻洗浄後に―使用してみることです。「鼻づまり」に対しては、内服薬はそれほど効果を示さないことは前述したとおりです。また副鼻腔炎が合併している場合でも、急性炎症をきたしている場合を除き抗生剤の長期使用は避けるべきと考えます。なぜなら慢性鼻炎に合併する副鼻腔炎に細菌が関与していることはむしろまれであり、安易な乱用は耐性菌をつくり出すリスクを高くするだけだからです。したがって、慢性鼻炎による「鼻づまり」に対しては、局所の薬剤治療を優先し、全身的には薬剤治療の代わりに、日中の適度な運動を含めた規則正しい生活習慣など、自律神経リズムを適正に保つ生活環境を整えることが大切と思われます。

多くは、この治療である程度の―ときに劇的な―改善が得られますが、そこで満足せず、睡眠中に鼻からの呼吸ができるようになったかどうかを見極めることが大切です。治療目標は、あくまでも睡眠中に鼻から呼吸ができるようになる状況を創りだすことにあります。反対に、保存的治療で改善しないからといって治療をあきらめ、睡眠中のいびきや口呼吸を放置すべきではないと考えます。これが小児においては深刻な弊害をもたらす可能性があることは、前述したとおりです。

そして保存的治療では改善しない「鼻づまり」に対しては、上述した安全な手術を組み合わせた集学的治療が考慮されます。手術の目的は1回の治療で完治させることではなく、少なくとも点鼻薬などでコントロールできる状態まで改善させ、安全かつ効果的に鼻からの呼吸を取り戻すことにあります。

最後に、「鼻づまり」を改善させることが、小児の心身の発育にどれほどの大きな効果をもたらすかを、本ウェブサイト「キッズ・の~ず」で知っていただき、治療の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。