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Ⅲ-2. 身体発育への影響

鼻やのど(上気道)に狭窄があると、睡眠時に口呼吸となり、いびきから無呼吸に至る様々な程度の呼吸障害をきたすようになります。これらすべてを包括した病名が、「睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing)」です。1976年、最初に「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」を提唱した米国スタンフォード大学のGuillminaultが、約20年後の1998年、小児の睡眠呼吸障害に関する集大成的な論文を発表し[文献13]、この中で、「鼻づまり」と睡眠呼吸障害の関係、そして睡眠呼吸障害と身体発育障害との関係について記述しています。

これによると、1980年代の初め、カリフォルニア大学のHarvoldやVargervicらが、生まれたばかりのサルを用いた一連の動物実験により、鼻の閉塞が、下顎骨、上顎骨、さらには上気道(鼻から気管の入り口まで)の発育をも阻害するといった、衝撃的な研究結果を報告しました。同様の変化はヒトの小児でも観察され、アデノイドや鼻炎による「鼻づまり」が治療されずに放置されると、下顎骨や上顎骨、舌や咽頭の筋肉、また舌骨などの成長を阻害し、"小さな上気道"が形成される結果、睡眠時の呼吸障害をきたすことが確認されています。そしてこれらの事実から、睡眠時の呼吸障害によるエネルギーの過度な消費が、インスリンの活性や成長ホルモンの分泌を乱し、身体の成長が抑制されるといった図式が推測されています[図Ⅲ-2-1]。

このことからGuillminaultは、この論文の中で、睡眠呼吸障害がみられる小児はまず鼻炎やアデノイドなど上気道狭窄をきたしている原因を取り除き、早期に鼻からの呼吸を取り戻すことを第一に考慮しなければならないと結論付けています。

図Ⅲ-2-1

[文献13] Guilleminault C, Pelayo R. Review article: Sleep-disordered breathing in children. Ann Med 30:350-356, 1998.