小児の睡眠呼吸障害とくにいびきと学業成績との関連性について、ドイツとオーストリアの小学生1,144人を対象に調査した興味深い報告があります。これによると、睡眠中にいびきをかいている小児では、学業成績が低下するリスクが正常小児の2倍であること、そしていびきの頻度が多いほどこのリスクが高まることが指摘されています[文献14]。この報告では、学業成績と夜間の酸素摂取量の減少(低酸素症)の因果関係を証明することができませんでしたが、成人の睡眠時無呼吸症候群にみられる日中の脳活動の低下は、夜間の低酸素症が原因とみなされています[文献15~17]。
また小児における睡眠呼吸障害が、脳の活動を低下させるだけでなく、脳自体の発育を阻害する危険性が、米国ルーイヴィル大学で実施された13~14歳の児童1,588人を対象とした調査で報告されています[文献18]。これによると、成績が下位の児童は、高率に6歳以前にいびきの既往を有していたことから、幼小児期の睡眠呼吸障害による低酸素症が及ぼす脳神経系へのダメージは、成長後においてもなお学習能力に悪影響を与え続ける可能性があると結論付けています[図Ⅲ-3-1]。
[文献14] Urschitz MS, Guenther A, Eggebrecht E, et al. Snoring, intermittent hypoxia and academic performance in primary school children. Am J Respir Crit Care Med 168: 464-468, 2003.
[文献15] Bedard MA, Montplaisir J, Richer F, et al. Nocturnal hypoxemia as a determinant of vigilance impairment in sleep apnea syndrome. Chest 100:367-370, 1991.
[文献16] Cheshire K, Engleman H, Deary I, et al. Factors impairing daytime performance in patients with sleep apnea/hypopnea syndrome. Ann Intern Med 152:538-541, 1992
[文献17] Gale SD, Hopkins RO. Effects of hypoxia on the brain: neuroimaging and neuropsychological findings following carbon monoxide poinoning and obstructive sleep apnea. J Int Neurophysiol Society 10:60-71, 2004
[文献18]Gozal D, Pope DW. Snoring During Early Childhood and Academic Performance at Ages Thirteen to Fourteen Years. Pediatrics 107: 1394-1399, 2001.