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Ⅲ-4.運動能力に対する影響

運動能力もまた、肺における酸素摂取量との間に密接な関係を有しています。運動負荷がかかると、呼吸数と心拍数が上昇します。これは、肺の中に、より多くの空気と血液を同時に送り込み、血液に浸透する酸素の量を増加させ、得られた酸素を速やかに全身の細胞に送り届けるためです。これによって、細胞内のエネルギー産生が活発に行われます。アスリートに高地トレーニングや低気圧トレーニング法が用いられるのも、酸素をより効率的に細胞へ供給できるような体をつくることが目的です。

「鼻の機能」の項で記述しましたが、鼻は、空気流量を絞る抵抗器として機能し、ゆっくりとした深い吸気によってより多くの肺胞の拡張を促し、また呼気の際には肺胞の中に空気が停留している時間を延長させ、酸素が取り込まれやすい状況を作り出しています。実際に、運動時における鼻呼吸の場合と口鼻呼吸(口と鼻を併用した呼吸)の場合との酸素摂取量を比較した調査があり、鼻呼吸の方が優れていることが実証されています[文献19]。また米国のプロのアスリートであるPerry Fieldsは、徹底した鼻呼吸の追求が、自身の記録の向上に有用であっとことを、ウェブサイト"アスリートのための呼吸法"の中で指摘しています[文献20][図Ⅲ-4-1]。

図Ⅲ-4-1

[文献19] Thomas SA, Phillips V, Mock C, et al. The effects of nasal breathing on exercise tolerance. In: Chartetered Society of Physiotherapy Annual Congress 2009, Liverpool conference center, 2009 (unpublished).

[文献20] Fields P. Breathing for Athletes. http://www.authentic-breathing.com/breathingforathletes.htm, 2004.