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Ⅴ-1.保存的治療(薬剤治療)の効果とその限界

「鼻づまり」に有効な薬剤としては、対効果が高い順に、充血除去剤(市販の点鼻薬)、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)、そして化学伝達物質拮抗剤(抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤など)を挙げることができます。

充血除去剤は、交感神経刺激作用により鼻粘膜の容積血管(⇒「鼻づまりとは?-発症機序」の項を参照)を収縮させ、鼻閉を改善させます。即効性で、薬剤中で最も確実な効果を期待できますが、1週間以上の連続使用はリバウンドをきたし、かえって鼻閉を悪化させる副作用(薬剤性鼻炎)があることが指摘されています。したがって、慢性的な「鼻づまり」に対して用いられることはほとんどありません。

ステロイド剤は強力な抗炎症作用があり、くしゃみ、鼻水、鼻閉の全症状に対して有効性を示します。しかし、注射あるいは長期間の内服使用は、ステロイド特有の副作用をきたす危険性があります。点鼻薬として用いる限りは、全身への吸収が少なく、吸収されてもすぐに分解されるため、長期に使用しても副作用がほとんどないことが知られており[文献26, 27]、このため通常は点鼻薬として用いられます。

化学伝達物質拮抗薬としては、ヒスタミン拮抗薬(抗ヒスタミン薬)、抗ロイコトリエン拮抗薬、抗トロンボキサン拮抗薬などがあります。概して化学伝達物質拮抗薬は、「鼻づまり」に対する効果は限定的であり、ロイコトリエン拮抗薬が花粉症における睡眠時の「鼻づまり」に有効であることが報告されているものの[文献28, 29]、他の化学伝達物質拮抗薬においては、「鼻づまり」に対する効果はほとんど認められていません。

このようなことから、安全かつ有効な「鼻づまり」治療として用いることのできる薬剤は、ステロイド剤の点鼻薬のみであり、これが現在の保存的治療の限界であるといえます。

[文献26] Wilson AM, Sims EJ, McFarlane LC, et al. Effects of intranasal corticosteroids on adrenal, bone, and blood markers of systemic activity in allergic rhinitis. J Allergy Clin Immunol 102:598-604, 1998.

[文献27] Allen DB, Meltzer EO, Lemanske RFJr, et al. No growth suppression in children treated with the maximum recommended dose of fluticasone propionate aqueous nasal spray for one year. Allergy Asthma Proc 23:407-413, 2002.

[文献28] Philip G, Malmstrom K, Hampel FC, et al. Montelukast for treating seasonal allergic rhinitis: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial performed in the spring. Clin Exp Allergy 32:1020-1028, 2002.

[文献29] van Adelsberg J, Philip G, LaForce CF, et al. Randomized controlled trial evaluating the clinical benefit of montelukast for treating spring seasonal allergic rhinitis. Ann Allergy Asthma Immunol 90:214-222, 2003.