保存的治療では改善しない「鼻づまり」に対しては、手術的治療が選択されます。「鼻づまり」の手術治療は、通常、下鼻甲介をターゲットとしたもので、下鼻甲介粘膜のたんぱく質を凝固変性させる「粘膜凝固術」と、下鼻甲介の粘膜や骨を切除する「切除術」の二つに分類されます[図Ⅴ-2-1]。
粘膜凝固術は、電気メスを用いた電気凝固術が最初の報告であり(1845年)、その後、薬剤(トリクロル酢酸)を用いた化学凝固術(1889年)、冷凍手術装置を用いた冷凍手術(1970年)、アルゴンレーザー(1977年)や炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー手術(1977年)、電気メスより高い周波数の電磁波を用いたラジオ波電気凝固術(1998年)、またスパーク放電により非接触で広範囲な凝固を可能にしたアルゴンプラズマ凝固術(2000年)など、術後出血、疼痛、粘膜表面のダメージなどの少ない方法へと進化してきました。
他方、下鼻甲介切除術は、電気凝固術より半世紀ほど遅れた1880年代から開始されています。はじめは、粘膜あるいは粘膜を含めた骨組織を単に切除する方法でしたが、その後、鼻の機能保存の観点から、1900年代初めには、粘膜を保存したまま粘膜下に骨を切除する手術―粘膜下骨切除術―が、さらに1980年代には、下鼻甲介の形態にも配慮した手術―下鼻甲介形成術―が行われるようになってきました。