content

Ⅰ.「鼻づまり」とは?

「鼻づまり(鼻閉)」は、"鼻が通りにくくなっている"と感じる自覚的な症状です。実際に鼻の通気性が低下―鼻腔抵抗が増加―している場合だけでなく、心因的な要素など、鼻の通気性には問題がない場合でも感じることがあります。

臨床上とくに問題となる「鼻づまり」は、いびきや口呼吸を引き起こすような「鼻づまり」です。このような「鼻づまり」は、原則として、鼻中隔弯曲症や片側のポリープ形成など、片側だけの鼻腔狭窄で生じることはありません。必ず反対側にも、鼻腔の通気性を妨げている何らかの問題が存在しています。これは、自分の片側の鼻を指でふさいでも、反対側が正常である限り「鼻づまり」を感じないことでもわかります。つまりいびきや口呼吸を引き起こす「鼻づまり」とは、両側の鼻腔通気性が低下している場合にみられる症状なのです。

小児における原因のほとんどは、慢性鼻炎(アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎)による広範な鼻腔粘膜の腫れ、あるいはアデノイドによる鼻腔後端の閉塞です。また、粘膜の腫れが軽度でも、吸い込んだ空気が流れ込むメインストリートである中鼻甲介周囲が中鼻甲介の肥厚によって狭くなった場合にも、「鼻づまり」を生じます[図Ⅰ-1-1]。

この項では、鼻腔自体の問題、すなわち慢性鼻炎による「鼻づまり」に限定して話を進めてゆきます。

図Ⅰ-1-1