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Ⅰ-5.「鼻づまり」と自律神経

「鼻づまり」に副交感神経がどのように関与しているかは、まだ明らかにされてはいません。副交感神経は、鼻汁を分泌する細胞に分布しており、容積血管のコントロールには直接関与しているわけではありません。しかし、低気圧(大気中の酸素の割合が減少)、肥満、ストレス、運動不足などで、副交感神経が優位になると、粘膜の炎症やアレルギー反応が増幅してくることが指摘されています[文献6][図Ⅰ-5-1]。また手術により鼻腔粘膜に分布している副交感神経の一部を切断すると、鼻汁だけでなく、粘膜の腫れが改善してくることが実証されています。

図Ⅰ-5-1

そもそも鼻腔粘膜の特徴は、腫れるためにつくられた特殊構造にあるといえます。容積血管に分布している交感神経の役割は、これとは逆の粘膜を収縮させる機能しか持ち合わせていません。このことは、容積血管のうっ血を促す何らかの間接的なメカニズムが存在していることを示唆しています。ホメオスタシス(神経やホルモンによって生体の内部環境を一定に保つ現象)の観点から、これは副交感神経以外にないであろうと筆者は考えています。そして「鼻づまり」をはじめとする鼻炎症状の治療には、副交感神経の過度の興奮を抑制し、交感神経とのバランスを正常化させることが重要と考えています。

[文献6] 安保徹. 「自律神経と免疫の法則」(三和書籍): 1-3, 2004.